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第72話

オースティンの視点

練習の最終リハーサルをしていたけど、歌に集中できなかった。声が震え、キューを何度も見逃してしまう。いつもの自分らしくない—特にパフォーマンスに関しては、普段なら集中できるはずなのに。

でも、頭の中は別のところにあった。

というか、別の誰かのことで頭がいっぱいだった。

チェイス。

彼が先ほどキティと一緒にいるのを見て、動揺してしまったことが嫌だった。そんなはずじゃない。僕たちは物事を控えめにしておくことに同意したのに、彼らが一緒にいるのを見ただけで、胸に何か落ち着かないものが沈んでいった。頭を振って、その考えを払いのけようとした。

「オースティン、大丈夫か...