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第60話

私たちはまだ音楽室にいて、キスの余韻が未完の旋律のように漂っていた。私は椅子に座り、床を見つめながら、整理できない思考に頭の中が駆け巡っていた。チェイスは私の隣に座っていたが、触れることはなかった。私たちの間の沈黙は濃密で、ほとんど息苦しいほどだった。まるで先ほど起きたことの後、何を言えばいいのか二人とも分からないようだった。

「それで、あの」ようやくチェイスが静寂を破り、その声は柔らかいながらも安定していた。「俺と夕食でも食べに行かない?」

私は瞬きをして、少し頭を傾けて彼を見た。彼は私の視線を合わせず、まるで私と同じくらい緊張しているかのように、床に目を固定していた。

「夕食?」私は...