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第34話

突然、チェイスの顔が私の頭に浮かんだ。胸がドキッとした。

くそ。また始まった。

目を閉じて音楽に身を委ねる。彼女の声は甘く、心に残る。美しい歌だったが、一音一音がチェイスの記憶を呼び覚ます——彼の生意気な笑顔、いつも私を気にかけていると言う口ぶり。

『友達のふりなんてできない

私たちは運命だったのかもしれないから』

ペンを握る手に力が入る。出場者の歌声に集中しようとしているのに、チェイスの顔が邪魔をする。おまけに、心臓が変な鼓動を刻んでいる。

「出場者に集中するんだ、オースティン」目を開けながら自分に囁いた。

席で落ち着かない様子で身じろぎし、歌詞が紡ぎ出す感情の綴れ織りに、解きほ...