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チャプター 64.ディセクター

驚いて顔を上げ、瞬きした。隣の席に滑り込んできたその子と名前が一致するのに、一瞬の間があった。

見慣れない顔。たぶん、アイリーンがいた学校からの転校生の一人だろう。廊下を漂っているのをぼんやりと見かけた記憶がある。気にも留めていなかった。アイリーンのことで手一杯で、自分のことで精一杯だったから。

その子にはどこか中性的な鋭さがあった――柔らかい顎のラインとは対照的に、カミソリで無造作に切られた髪が、まるで意図的なヴェールのように淡い色の瞳にかかり、実際に見えるものよりも多くのものを隠しているかのようだった。

黒いシャツを着ていて、時折そこからのぞく両腕には、波の複雑な模様、抽象的なパターン、神...