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チャプター 93

太陽がゆっくりと傾き始め、土埃の舞う道に長い影を落としていた。ローナンとその護衛が、森に近い尾根の麓に佇む酒場に到着した頃には。建物は質素ながらも頑丈な造りで、石造りの土台と黒ずんだ木の梁が、長年風雪に耐えてきた歳月を物語っていた。煙突からは煙がゆるゆると立ちのぼり、燃える松の香りと、微かに香辛料の混じった匂いを運んでいた。

ローナンは馬から降りながら息を吐いた。馬上から解放された身体が喜んでいるかのようだった。子を宿した腹が旅の負担を訴え、腰の低い位置に鈍い痛みが居座っていた。彼はそれを無視した。

騎士の一人、ギャリックという男が進み出て、支えるように手を差し伸べた。「殿下、お手をどうぞ...