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第九十二章

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朝日は空低くにかかり、シルバーワイルズ城の石畳の中庭に長い影を落としていた。涼やかな風が松と湿った土の匂いを運び、厨房から漂う焼きたてのパンのかすかな香りと混じり合っている。その平和な光景とは裏腹に、ローナン王子とディミトリの間の空気は、言葉にされない思いで重く淀んでいた。

ローナンは馬車の傍らに立っていた。その濃色の外套が風にはためき、手はチュニックの上から自身の膨らんだ腹に無意識に置かれ、指がゆっくりと思案げに円を描いている。彼の金色の瞳は揺るぎなかったが、翳りが見られた。ウィンドガードへの旅の重圧を映し、それでいてなお、前の晩彼を眠らせ...