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チャプター 89

ディミトリとローナンがその部屋に足を踏み入れた瞬間、重厚な木製の扉が彼らの背後で閉まり、二人を外界から隔絶した。

シルバーワイルドの広間には、いまだ彼らの存在の余韻が響き、戦士や貴族たちの囁き声が満ちていたが、この部屋にはただ二人きりだった。

ディミトリはゆったりとした優雅な動きで黒い外套を脱ぎ、近くの椅子に掛けると、布地が囁くように静かに落ち着いた。彼はローナンに向き直った。その眼差しには普段の鋭い面白みが和らげられ、柔らかな光が揺らめいていた。

ベッドの端に腰を下ろすと、毛皮がわずかに沈み込み、彼はローナンに手を伸ばした。その手つきは優しく、しかし有無を言わせぬものだった。やすやすと...