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チャプター 84

書斎は、ペンが羊皮紙を擦るかすかな音を除けば、静寂に包まれていた。ディミトリはその夜のほとんどを、ひっきりなしに届く手紙の整理に費やしていた――外交報告、政治的画策、貴族家からの些細な紛争。

どれも真に重要なものではなかった。

その時、彼の手指が、エイロック公爵家の王家の紋章で封をされた封筒の上で止まった。

その封蝋に見覚えがあった。

イヴァン。

見慣れた、正確に書かれた筆跡を目にした瞬間、奇妙な重みが彼の胸にのしかかった。

ディミトリは素早い動きで蝋の封を割り、慎重に手紙を広げた。

彼の目は言葉を追い、最初は石のように無表情だった。

そして――ゆっくりと、ぞっとするような変化...