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チャプター 81

セラフィナの足音が、薄暗い宮殿の廊下に響き渡った。揺らめく燭台の光が大理石の床に長い影を落としていたが、彼女の表情はディミトリの書斎に着くまで、感情を読み取らせない、威厳に満ちたものだった。

彼女はノックをしなかった。

扉を押し開けて中へ入ると、すぐさま眼前の光景を把握した。

ディミトリは壮麗なマホガニーの執務机の向こうに立ち、彼の騎士の一人に低い声で話しかけていた。磨き上げられた黒い鎧をまとった騎士は、女王の入室に気づくと深々とお辞儀をした。

セラフィナの声は、穏やかではあったが、命令の重みを帯びていた。

「我が息子よ」

ディミトリは視線を上げ、その空色の瞳が彼女の瞳と一瞬交わっ...