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チャプター 76

暖炉の薪がぱちぱちと微かに爆ぜる音だけが響く室内は静まり返り、部屋全体を淡い黄金色の光が照らし出していた。空気にはまだ儀式の残り香が漂っていた――空間そのものに織り込まれた魔法の気配、そして稀少な血の香りが。

ローナンはベッドに横たわり、その呼吸はゆっくりと穏やかだったが、うっすらと開かれた金色の瞳には新たな光――意識の光が宿っていた。

彼は目を覚ましたのだ。

傍らの椅子に腰掛けていたディミトリは、すぐさま背筋を伸ばし、その空色の視線をローナンの瞳に注いだ。この二日間の疲労が彼に重くのしかかっていたが、今はもうそんなことはどうでもよかった。

ローナンは生きている。

髪は汗で湿り、肌はま...