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第六十五章

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土道を行く馬車の車輪の規則正しいリズムは、ローナンを深い眠りへと誘っていた。旅の疲れで既に消耗しきっていた彼の身体は、馬車の穏やかな揺れに身を任せていた。だが、その時――

突然の停止が彼をわずかに揺さぶったが、彼は眠ったままだった。

扉がきしみながら開き、冷たい夜気が流れ込んできた。長旅にもかかわらず、その乗り手――ディミトリは、まっすぐな姿勢でそこに立っていた。傍らには、見慣れた暗色の貴族服を纏った従者、アイヴァンがいつもの落ち着き払った様子で控えている。

アイヴァン。

「殿下」アイヴァンは軽く頭を下げて言った。「シルヴァーハート亭に到着いたしま...