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チャプター 64

城門の空気はひんやりとして、朝霧の匂いと、入り口に並ぶ松明のかすかな木の燃える香りが混じり合っていた。セラフィナは女王らしい威厳のある佇まいで、目の前の二人の人物を見つめながら、体の前で手を組んでいた。

「息子よ」ディミトリを見つめ、彼女は穏やかでありながらも威厳のある声で言った。それからその鋭い視線はローナンへと移る。表情は読み取れない。「ローナン。道中、気をつけて」

ディミトリは頷いた。普段の傲慢さは母親の前では鳴りを潜めている。「ありがとうございます、母上」

ローナンはため息をついた。これからの一週間を思うとすでに気が重い。「ありがとうございます」と彼は呟いたが、その言葉に熱意は...