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第二十九章

馬車はでこぼこの石畳の上を穏やかに揺れ、霜が狭い道を白く染める中、車輪がきしむ音を立てた。車内では、ケイランが腕を組み、これといって何を見るでもなく、じっと前を見据えていた。

アイヴァンが窓から身を乗り出す。

芝居がかったほどではなく――ただ、月の光が彼の鼻筋のカーブと、細められた瞳の輝きを捉える程度に。

「ここが神話の場所だったとはな」彼はつぶやいた。「最後の野蛮な聖域。狼どもが狩りをし、酒を飲み、そして時折、統治者であることを思い出す場所」

ケイランは顔を上げなかった。「到着する前から王家を侮辱するのはやめておけ」

「侮辱などしていないさ」アイヴァンは楽しげな口調で返した。「そのこだわりを...