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チャプター 209

火は弱まり、その光が石壁に長い影を落としていた。部屋にはラベンダーワックスと羊皮紙の匂いが満ちていた――ローナンの気配りだ。いつも思慮深く、いつも静かだった。

彼は床にあぐらをかき、袖を肘までまくり上げ、薄い青絹の布で小さな贈り物の箱を包むのに指を忙しく動かしていた。それは古いものだった――アラリックの好きな色の一つ。いや、好きだった色か。

布の角を折り、優しく結びながら、彼の唇が動いた。

「これは気に入ってくれたと思う」彼は独り言ではなく、記憶に向かって囁いた。「口には出さなかったけど、じっと見ていた。それで十分だ」

背後でドアが軋んで開いた。

ディミトリが中へ入ってきた。コートは...