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チャプター 204

城門は軋む音ひとつ立てなかった。権威の重みそのものといった風情で開き、持ち場の衛兵たちは微動だにしない。噂は風よりも速く伝わっていた。北方の高名な使者――三日月を身に着けた――に護衛され、ひとりの少年が到着した、と。

玉座の間では、ステンドグラスから射し込む光が砕けて床に色とりどりの模様を描いていた。ローナンは広間の奥に立っていた。簡素な服装で、王冠も王家の装飾品も見当たらない――ただ、息詰まるほどの希望だけを胸に。ディミトリがその傍らに控え、ローナンの腰のあたりに手を添え、無言ながらも張り詰めた空気を漂わせている。

扉が開いた。

少年が中へ足を踏み入れた。

年は十七の頃だろうか。色白...