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チャプター 187

その刺青店は、赤糸横丁の裏手にひっそりと佇んでいた――ポーション薬局とルーン織りの露店に挟まれるようにして。木製の看板には店名はなく、黒地に白い三日月の牙が描かれているだけだった。

店内の香りは温かかった。薪の煙。焦げた樹脂。塩を含んだインク。どこか懐かしい香り。

カルヴェンが先に足を踏み入れ、アラリックがすぐ後に続いた。

カウンターの向こうにいた女が、革装丁の本から顔を上げた。その瞳は銀灰色で、鋭く、思慮深かった。尻尾も耳もない。しかし、その存在感は紛れもないものだった――たとえ都会人の皮を被っていても、彼女は雌狼なのだ。

彼女は本を脇に置いた。「いらっしゃい」

カルヴ...