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第105章

しじまが夜の闇を分厚く覆い、ノクティス・ドミニアを永遠の帳とばりのように包み込んでいる。立ち昇る煙の蔓つるに隠された月のかすかな光以外、その静寂を破るものは何もない。

宮殿の向こうに広がる街は静まり返り、その尖塔せんとうは紫色の黄昏たそがれを突き刺している。まるで王宮の奥深くで今まさに起ころうとしている瞬間に敬意を表するかのように、尖塔に灯る魔法の炎も光を弱めている。室内は暖かく、杉とラベンダーの香りが漂い、魔法のランタンが放つ低い唸うなりと、暖炉で燃える残り火がパチパチとたてるかすかな音だけが空気を揺らしている。燃えさしが黒曜石の壁に束の間の影を投げかけていた。

ディミトリはローナンの隣...