




第5話
エリーゼの視点
エレベーターが再び動き出し、私は鏡張りの壁に寄りかかったまま、ほとんど息もできない状態だった。足はゼリーのようにふらつき、ズボンのジッパーに手こずっていた。体からはすべてのエネルギーが抜け落ちていた。頭を横に傾げると、カイルが目に入った。彼はいつもと変わらぬ冷静さで、まるで何も起こらなかったかのように服を整えていた。その余裕のある仕草に苛立ちを覚えたが、何かを言う力すら残っていなかった。
「気絶しそうな顔してるな」カイルは言った。その唇の端にかすかな笑みが浮かんでいる。
「そう感じてるわ」私はかすれた声で呟いた。体は認めたくないような痛みを感じていた。
カイルが近づいてきた。彼の鋭い香水の香りが、湿った、紛れもない空気中に漂う匂いと混ざり合う。私は内心で顔をしかめた。エレベーターは私たち二人のフェロモンが混ざり合い、セックスの濃厚な匂いで充満していた—隠しようがなかった。その考えだけで恥ずかしさに胃がひっくり返りそうになった。
「大丈夫だよ」彼はシャツについた見えない埃を払いながら言った。「部屋に着くまで我慢するんだ」
私は彼を睨もうとしたが、意図したよりも弱々しいものになってしまった。「言うは易し、行うは難し。足がもうすぐ動かなくなりそう」
カイルが返事をする前に、エレベーターが減速し、柔らかなチャイムの音が30階到着を告げた。ドアが開くと小さな群衆—メンテナンス作業員、ホテルスタッフ数名、そして騒ぎの原因を見ようと首を伸ばす好奇心旺盛な宿泊客が数人—が現れ、私の心は沈んだ。
一瞬、私は凍りついた。恥辱の波が押し寄せ、血の気が引いた。彼らは何か聞いたに違いない。あるいはもっと悪いことに—匂いを嗅いだかもしれない。
カイルは一瞬の躊躇もなかった。私が羨ましくもあり、イライラするほどの滑らかさで、彼はエレベーターから出て、私の肩に腕を回した。「遅れてすみません」彼は集まった人々に向かって、落ち着いているが断固とした口調で言った。「友人が気分悪くなって。上ってくる途中で少し気を失いかけたんです」
私はあまりの驚きに反論もできず、彼をただ見つめた。彼は私をほとんど抱えるようにしてエレベーターから連れ出した。彼の手は私の背中にしっかりと押し当てられ、まるで何千回も練習したかのような自信を持って私を導いた。
「まあ、大変!」スタッフの一人が前に出て叫んだ。「医療援助が必要ですか?誰かを呼びましょうか?」
「いいえ、大丈夫です」カイルはスムーズに答えた。「ただ休息が必要なだけです。長い一日でしたから、わかりますよね」
彼らの視線の重みを感じることができた。彼らの目は私たちとエレベーターの間を行き来していた。今となっては紛れもない—濃厚なフェロモンの匂いが霧のように空気にまとわりついていた。頬が熱くなり、カイルの肩に顔を埋めたい衝動と戦った。
「歩けるわ」私は囁いた。それは実際の能力というより、プライドのためだった。カイルは私をもっとしっかりと掴み、声を落として私だけに聞こえるように囁いた。「もちろん歩けるさ。そして皆の前で倒れるんだろ。任せておけ」
彼がこういう状況で余裕を見せる姿に腹が立った。一方で私は、彼らの視線の重みで窒息しそうだった。
ありがたいことに、スタッフたちはカイルの芝居を信じたようだった。一人が私のバッグに手を伸ばし、もう一人が部屋まで案内すると申し出た。「お荷物をお部屋までお持ちします」誰かが少し明るすぎる声で言った。
「ありがとう」カイルは彼らに素早く微笑みかけて答えた。「助かります」
私は彼の隣でよろめきながら廊下を進んだ。頭は重く、手足は鉛のようだったが、カイルの手が私の背中を支え、現実に繋ぎとめてくれた。
「あなた、こういうの上手すぎるわ」私はかすかに聞こえるほどの声で呟いた。
「何がだ?」彼は私を見下ろして尋ねた。
「嘘をつくこと」私は苦々しく言った。
彼は低く静かに笑った。「嘘じゃない。ただ…即興演技さ」
私は返事をしなかった。一歩一歩前に進むことだけに集中し、廊下を通る私たちを追ってくる囁き声を無視した。エレベーターから遠ざかるにつれて呼吸は楽になったが、恥ずかしさはまだ第二の皮膚のように私に纏わりついていた。
ようやく部屋に着くと、カイルは私のポケットからキーカードを取り出し、片手でスワイプした。もう片方の腕は依然として私を支えていた。ドアがカチッと開き、彼は私を中へ導き、後ろでしっかりと閉めた。
カイルの手は私をベッドに降ろす時、しっかりしていながらも慎重だった。マットレスは柔らかかったが、私の感じる不安の中では針のベッドと変わらなかった。私は目を閉じたまま眠りを装い、ゆっくりと規則正しく呼吸していたが、内側では心が激しく揺れていた。
「休め」カイルは珍しく優しい声で呟いた。彼の視線の重みが私に留まり、彼が私の上に毛布を掛け直すのを感じて、身震いしそうになるのを必死で抑えた。
ドアが静かに閉まる音が合図のようだった。彼が去ったと確信した瞬間、私の目は開き、天井を虚ろに見つめた。
部屋は静まり返っていた。エアコンのかすかな唸り以外は何も聞こえなかった。カイルの匂いがどこにでもあった—シーツに、空気中に。それは鋭く容赦なく、非難のように私に纏わりついていた。
私は横向きになり、体を丸めた。深く噛みつくような罪悪感が胸に広がった。今日の出来事が鮮明に、容赦なく頭の中で再生された。物事を悪化させてしまった経緯。止めなかった自分。
私は両手で顔を覆った。まるで恥を遮断できるかのように。しかし逃げ場はなかった。私はキャメロンを裏切った。私のキャメロンを。
「私、いったい何をしているの?」空っぽの部屋に向かって囁いた。私の声は割れ、その音に自分でも顔をしかめた。
キャメロンの顔が、招かれもせず鮮明に心の中に浮かんだ。彼の温かい笑顔、笑った時に輝く目、優しい触れ方。彼は私を信頼してくれた。愛してくれた。そして私は…ためらいもなくその信頼を投げ捨てた。