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第54章

「玲子はそんな世渡り上手な人間では決してない」田中浩一はきっぱりと言い切った。

「彼女の心に想い、愛する人は、始めから終わりまでただ一人、この俺だけだ」

彼は高橋玲子のことを十分に理解していたし、自分自身にも十分な自信があった。

だからこそ、田中浩一の目には今、高橋月見の言葉に対する軽蔑の色が満ちていた。

「もし彼女が本当にあなたを愛していたなら、どうして佐藤時夜と結婚などするだろうか!

この世であなたへの想いが本物なのは、ただこの私だけだ!」

高橋月見はすでに感情を抑えきれず、何も顧みずに田中浩一に飛びついた。

彼女は彼をしっかりと抱きしめ、その涙は決壊した洪水のように激しく...