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第11章

人々が佐藤時夜と佐藤甚平の視線がこちらに向いているのを見て、皆は無意識のうちに彼らが高橋月見を見ていると思い込んだ。

「月見、彼たちが見ている方向、あなたのことじゃない?」

「そう見えるわね。ここで月見以外に、この二人を知っている人なんていないもの!」

高橋月見は彼女たち若手歌手の中で唯一名門の家柄と言える存在で、当然のように周りから持ち上げられていた。

「変なこと言わないでよ。私は佐藤さんとちょっと協力するだけだから」高橋月見は内心で喜びながら、思わず自分をアピールしようとした。

これは嘘ではなかった。彼女にとってグラミー賞のノミネートはすでに自分のものだと思っていたからだ。

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