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32話

【デナリの視点】

私はロスコが消えた方向をじっと見つめながら、体の中で何かがゆっくりと変化していくのを感じる。けれどそれでも、私は動かない。結局のところ、私にはその権利がなかったのだから。しばらくしてから、私は立ち上がってバスルームへ向かう。そこにはまだロスコの香りが残っていた。さっとシャワーを浴び、寝間着に着替える。

身体を洗い、くつろげる格好になってからベッドに入り、眠ろうとするが、なかなか眠れない。ようやく太陽が昇り始めるまで目が冴えていた。一晩中過ぎ去ったにもかかわらず、ロスコは戻ってこなかった。

感情が押さえきれなくなり始めたとき、私は起き上がり、運動着に着替えて、ホテルを出て通...