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170話

[デナリの視点]

私は前へと進み、鼻で呼吸しないよう、そして周囲の世界をあまり注視しないようにしている。感染した人々のうめき声が辺りに響き渡り、看護師や医師の足音が床を急ぐ音と混ざり合う。誰も私に注意を払わない。まるでここでは私が幽霊のようで、病人のことで頭がいっぱいの彼らは、私のことなど気にも留めていないのだろう。

私はロスコの馴染みのある気配を感じるまで歩き続ける。彼がいる場所を特定したら、歩き始め、ちょうどマリアが部屋から出てくるのを見つける。彼女は疲れ果て、血まみれだった。

「マリア」私は息を呑みながら前に進む。「状況はどう?」

「それは…」彼女は心配そうに唇を噛みながら言い始...