教授の誘惑

35話

トムは卵を数個ボウルに割り入れた。必要以上に強く割ったかもしれない。「いや、まだ独りだよ。なんで？ママに言われたの？」

「おいおい、俺を信用してくれよ」レオは抗議した。「ただ兄貴を気にかけてるだけだって」

俺は卵を泡立てることに集中した。「そうだな、『兄弟愛』って恋愛事情を詮索することだもんな」

レオはカウンターに寄りかかり、ワイングラスを揺らした。「ただ、お前がまだジョセフィーヌのことを引きずってないか確認してるだけだよ。あの船はとっくに出航したんだぞ、兄貴」

俺は泡立て器を持ったまま固まった。その名前を聞いて不意打ちを食らったような気分だった。ジョセフィーン。元カノ。

「レオ」俺...