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320話

サラ

猫のようにだらしなく伸びをしながら、体の下の柔らかさを楽しんだ。朝日が床から天井までの窓を通して壁に模様を描き、抽象画を思わせる踊る影を作り出していた。

「よし、まずは髪だな」私はバスルームに向かい、ドライヤーのコンセントを差し込んだ。温かい風が頭皮に当たり、私は一房一房丁寧に乾かしていった。

「見て見て、こんなに責任感があって大人っぽい私」鏡に映る自分に向かって、子供の頃によくやっていたような顔を作った。なかなか抜けない癖というものだ。

最後の一房を乾かし終えたちょうどその時、スマホが振動した。

「おやおや」画面を見て私はニヤリとした。「やっと私の存在を思い出したみたいね」

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