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195話

サラ

タクシーが急に止まり、私の手からスマホが飛びそうになった。メーターを確認して財布を取り出し、たった10分の乗車にしては高すぎると感じる金額を渡した。

「お釣りはいいです」と私はつぶやいたが、残りはほとんどなかった。運転手はうなり声で返事をしたが、私はそれを感謝の意と解釈することにした。

歩道に降り立つと、カフェラテのおなじみの緑色の日よけが私を迎えてくれた。朝のラッシュは過ぎ去り、ノートパソコンで作業したりスマホをスクロールしたりしている客がわずかに点在しているだけだった。

ドアを押して入ると、上の小さなベルがチリンと鳴った。コーヒーと焼きたてのペストリーの香りが暖かい抱擁のよ...