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170話

サラ

トムの車が見慣れた通りを通り抜けると、街の灯りがぼんやりと流れていった。私の週末のおとぎ話は終わりに近づいていたが、その思い出はまだ肌に残っていた。

「お帰りなさい」トムが私のアパートの前に車を停め、エンジンを切った。言葉にできない想いで満ちた沈黙が重く感じられた。

私はシートベルトをもてあそびながら、この私たちだけの世界を離れる準備ができていなかった。「ありがとう…全部」

「全部?」彼は片眉を上げた。「それはかなり曖昧だね」

「だって、全部列挙できないわ。一晩中かかっちゃう」

「僕は文句言わないけどね」彼の手がコンソールを越えて私の手を見つけた。「でも、真夜中に駐車...