5話
私たちは広々とした廊下を歩いていた。長い廊下だった。壁はクリーム色で清潔に保たれ、モダンアートの装飾は最小限に抑えられていた。床は美しい寄木張りだった。モダンな照明器具からは明るいハロゲンライトが放たれ、明るい壁に反射していた。歩きながら、多くの閉じられた白いドアに気がついた。
私たちは閉じられた白い両開きのドアに到着した。アッシャーが前に進み、右側の壁にあるスキャナーに手のひらを置くと、カチッという音がした。アッシャーがドアを押し開け、私たちは全員中に入り、広々としたホールに出た。天井全体がトップライトになっており、高い梁からクリスタルのシャンデリアが吊り下げられていた。太陽は沈みかけで燃えるようなオレンジ色をしており、暗闇が迫っていた。ホールは広々としており、壁に沿ってモダンな休憩スペースがいくつかあった。さらに二つの廊下がT字型に交わっていた。
「この廊下は私たちのプライベートスイートに通じている」マットロックが言い、私たちが歩いてきた廊下の奥を指さした。「私たち以外は許可された者だけが入れる。君はアッシャーとザイオンの間の部屋で、私の部屋はドアの近くだ。後で私たちの部屋を見せよう。左側の廊下には十五の客室があり、向かいの廊下には私たちのホームオフィスがある」
右側には、大きな大理石と黒い鉄でできた螺旋状の階段と、中央にガラスと鉄でできたエレベーターがあった。私たちは階段を使った。「二階はガードの事務所とジム、そして彼らの宿舎だ。アッシャーが言ったように、敷地内には常時百人以上の武装した男たちが待機している。君がこの家の外に一歩でも踏み出せば、六人から八人の武装した護衛がつくことになる」マットロックは私を次の階段へと引っ張りながら話し続けた。ホールは上の階と同様の造りだったが、トップライトはなかった。彼は冗談を言っていなかった—少なくとも二十人のガードがホールだけでくつろいでおり、他にも何人か歩き回っているのが見えた。私たちの横を通る者は皆、脇に寄って敬意を表して頭を下げた。彼はまた、緊急時のために各階にパニックルームがあり、全てのガードが私を最優先で守るべき存在と認識していると教えてくれた。
メインフロアに着くと、ホールは同じく広大で壮麗だった。正面玄関はほぼハーフフットボールフィールドほど離れたところに見え、床から天井まで届く窓に囲まれていた。中央には巨大なモダンなシャンデリアが吊り下げられており、床は白い大理石だった。両側の壁には開口部がいくつかあった。
「右側は私たちのフォーマルな応接室の一つだ。左側はメインのボールルームとダイニングルームだ」マットロックは階段の裏側にある別の廊下へ私を引っ張る前に説明した。
「あのドア」彼は階段下にある大きなドアを指さした「は地下へ続いている。そこは私たちのうちの一人が一緒でなければ立ち入り禁止だ。下には四階分ある。完全装備のジムとトレーニングアリーナ、室内プール、ゲームルーム、収納、そして私たちのダンジョンがある」ザイオンが説明した。
彼らは私にメインフロアを案内してくれた。さらに応接スペースがいくつかあり、ビリヤードルームあるいは男のための隠れ家のような部屋、美女と野獣のような動く梯子が付いた小さな図書館、音楽室、プライベートシアター、多目的室がいくつか、そして二つの設備が整った厨房があった。また、使用人の区画もあり、そこには洗濯室とガレージがあった。彼らは誇らしげに、ガレージには標準的なSUVに加えて希少で珍しい車のコレクションがあると教えてくれた。
敷地内には、メインの建物からそう遠くないところに納屋と個人用の温室もあった。彼らは、もし私がいい子にしていれば、私の馬に会わせてくれると言った。彼らは私について全てを知っているわけではない—私は馬に極度のアレルギーがあるのだが、今はまだ何も言わないでおこう。
私たちは家の左側にある小さなダイニングルームに入った。それはダウントン・アビーのダイニングルームを思い起こさせた—とても豪華で、旧家の金持ちらしく、古風だった。家具はアンティークに見え、小さなテーブルには既に最高級の磁器の食器とクリスタルのゴブレットが用意されていた。正装した使用人の男女が壁に沿って並んでいた。
マットロックは私をテーブルへ連れて行き、彼の椅子の右側に座らせた。アッシャーはテーブルの反対側の端に座り、ザイオンは私の向かいに座った。座ると顔をしかめた。お尻がまだとても痛く、かゆみのある生地は痛みを和らげるのに役立たなかった。
マットロックが指を鳴らすとすぐに食事が出された。フィレミニョン、ローストポテト、香り付けされた野菜だった。「プリンセス、特に客人がない限り、ほとんどの食事はここで取ることになる。この部屋に招かれる客はごくわずかだ。土曜日に君がきちんと振る舞えば、ベッドで朝食を取る褒美を与えよう」マットロックが言った。私は黙って頷き、皿の上で食べ物をぐるぐると押し回し続けた。男たちの会話は聞き流した。ビジネスについて話しているようだった。
私はお腹が空いていたが、目の前の食事の食欲をそそる香りと美しい盛り付けにもかかわらず、食べる気になれなかった。ステーキはバターのように柔らかそうに見えた。
兄たちのことを考え始めた。昨日は私の誕生日だったのに、彼らと祝うことができなかった。兄たちはいつも私を甘やかしてくれたが、私の誕生日はいつも大事な行事だった。今、私は囚われの身だ。人生が終わったような気がする。ここから脱出するには強くならなければならないとわかっているけど、女の子には一日くらい自分を哀れむ権利があるでしょう？温かい塩辛い涙が頬を伝うのに気づくまで、自分が静かに泣いていることにも気づかなかった。急いでそれを拭き取った。
「プリンセス、食べなきゃだめだよ」マットロックが言ったが、私は彼を見上げなかった。フォークでブロッコリーを一切れ刺し、唇まで持っていこうとしたが、手が激しく震えていたので、おそらくシルバーウェアが発作を起こしているように見えただろう。もう一滴の涙を顔から拭き取り、鼻をすすった。
椅子が床の上で擦れる音と、衣擦れの音が聞こえたが、私はあえて顔を上げなかった。そして私の隣に暗く男性的な存在を感じた。しっかりとした優しい手が私の顎を持ち上げ、頭を回して、マットロックを見つめるようにした。彼は椅子を私のすぐ隣に移動させていた。彼の目は輝き、小さな笑みが彼の唇に浮かんでいた。彼は何も言わず、代わりに私の皿を自分の方に引き寄せ、小さな子供のように食べ物を切り始めた。
それから彼はフォークで美味しそうな一口を私の唇に運んだ。「口を開けて、ベイビー。僕が面倒を見てあげる」何が起こったのかわからないが、私は従った。舌に広がった風味の爆発に私は思わず声を漏らした。何をしてしまったかに気づいて、口を手で覆い、頬が熱くなるのを感じた。男たちは笑った。「いい子だ」次の一口のために再び口を開けると、彼は私を褒めた。
私はその男に皿全部を食べさせてもらった。今すぐ全力で抵抗して、この馬鹿どもを困らせるべきだとわかっているけど、今日はそんな気分じゃない。ひどい話かもしれないけど、今は世話をされるのを楽しんでいる。兄たちがいつも私に食べさせるのが好きだったからかもしれない。特にデザートは。私は甘いものが大好きだから。ザックは健康オタクだから私の砂糖摂取をコントロールしたがるけど、ケビンかケイレブがいつも余分に持ってきてくれる。
全部食べ終わった後、マットロックは身を乗り出して愛情を込めて私の額にキスし、もう一度褒めてくれた。私は顔をしかめるのを我慢した。
「ああ、プリンセス、こちらはロベルト、私たちの執事長だ。彼と彼の妻パイパーがこの屋敷のスタッフを統括している」マットロックは彼の後ろにいるタキシードを着た年配の男性を示しながら言った。その年配の男性は背が高かったが、彼らほど高くはなく、がっしりとした体格だった。彼は白髪交じりの髪をしており、威厳と優雅さを持って自分を保っていた。紹介されると彼は頭を下げた。「ロベルト、こちらはソフィー。私たちのプリンセスで、この家の新しい女主人だ。彼女が私たちのものであり、彼女の地位にふさわしい敬意を払うよう全スタッフに確実に伝えてくれ。パイパーに自己紹介させ、私たちの部屋用に許可した女中たちにも紹介するように」
「もちろんでございます。お嬢様、光栄です。何かご入用でしたら、どうぞ遠慮なく私たちにお申し付けください」ロベルトは簡潔に言った。私は彼に脱出を手伝ってほしいと頼もうとしたが、まだ誘拐犯たちの前にいることを知って舌を噛んだ。ここでは賢くならなければ。
マットロックは、常勤スタッフが三十人いることや、彼らが毎日行う素晴らしい仕事について話し続け、最高に美味しいチョコレートケーキを食べた後、私はハウスキーパー長のパイパーさんに紹介された。彼女は美しかった。白髪交じりの髪をした年配の女性で、おそらく六十代後半だろう。彼女は映画で見るような古典的な気の強いハウスキーパーを思い起こさせた。
さらに四十分後、彼らはダイニングルームを出る時間だと決めた。マットロックは再び私の手を掴み、メインホールへ向かい始め、見た感じではガラスのエレベーターに向かっていた。
まるで私の星が一瞬だけ整列したかのように、正面玄関が開き、数人のガードが箱を運んで入ってきた。彼らがすぐに外に戻ると、ドアは開けっ放しになった。咄嗟の判断で、私が裸足で、ドレス姿で、銃を持った暴力団に囲まれていることを忘れ、マットロックの手から手を引き離し、開いたドアに向かって走り出した。