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64話

夜は静かに包まれていた。久しぶりに、心地よい眠りの準備をしっかりと整えた。熱々のシャワーを浴びた後、長らく放置していた美容ルーティンに取り組むことにした。

髪にカーラーをセットし、未開封のフェイシャルクリームを混ぜ、顔全体に塗り広げた。ミントの香りが肌に心地よい刺激を残し、冷えて乾いていく。その間、足をバスタブの縁に乗せて、簡単なペディキュアを施した。

おそらく、夜がスムーズに過ぎていったからだろう、自分を甘やかす余裕を感じていた。普段なら朝まで後回しにして、時間に追われながらやることが多いのだけれど。トイレの蓋に座り、ルビーレッドのネイルポリッシュを爪に塗りながら、これまでの怠慢を後悔し...