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116話

アレクサンドルとの甘い二人きりの時間なんて、もうあきらめるしかない。セーヌ川沿いのロマンチックな散歩や、趣のあるパリのカフェでカフェオレを楽しむことも。アレクサンドルが私たちを夢の都から連れ去る渦巻く門を開くのを見ながら、皮肉っぽく考える。愛の都パリなのに、ルーヴル美術館を見ることもなく、エッフェル塔さえもろくに見れないまま駆け抜けている。「次回は」と自分に言い聞かせるけど、その約束はクロワッサンのかけらのように頼りなく感じる。特に迫り来る破滅の重みが私たちの上に垂れ込めている今は。

アレクサンドルと手をつないで門の中に足を踏み入れる。いつもの高揚感と吐き気、どんな遊園地も再現できないような...