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55話

**エスメ

アンドレアスは出発の時間になると、自ら私たちの馬車まで送ってくれた。彼のノヴァクに対する冗談や気遣いに、私は複雑な気持ちになる。一方では、祖父が孫に接するような優しさでノヴァクに接しているが、他方では、無数の人間を殺害し奴隷にした責任がある。目の前の男性におけるこの二つの人格を調和させるのは難しい。

「お越しいただき光栄でした、エスメ」

「お時間を共にできて楽しかったです、陛下。ただ、もっと良い状況で別れを迎えられたらと思います」

「残念ながら、そうはならなかったな。若者たち、気をつけて帰るがよい」

「すべてに感謝します、祖父。何か必要なことがあれば、どうぞ遠...