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52話

〜キリアン〜

キリアンがこの言葉を口にするのは、とても勇気がいることだった。彼は自分の口から「愛」という言葉が出るなど想像もしていなかった。去年なら、愛は彼の決断に何の影響も与えなかっただろう。しかし一年で多くのことが変わった。オードリーは彼の人生を一変させたのだ。

オードリーは混乱して彼を見つめることしかできなかった。彼の愛の告白は、オードリーを独り占めしたいという欲望という部屋に居座る巨大な象によって影が薄れていた。これはキャスピアンとの婚約パーティーのはずだったが、キリアンは彼女と兄を祝福するどころか、イベントを妨害することを選んだ。

「キル…」オードリーはようやく口を開いた。彼女...