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第7章

男は背が高く、真っ黒な高級オーダーメイドスーツを身にまとい、眉間には冷たい気品が漂っていた。そのまま岩崎奈緒の前まで歩み寄ってきた。

岩崎奈緒は少し呆然としていた。藤原光司が既に彼女が誰なのか知っているのかと思ったが、藤原光司の冷たい声が聞こえてきた。「林田景が言っていた人間、お前か?」

林田景?

岩崎奈緒は林田社長のフルネームを知らなかったが、名門貴族同士が互いに知り合いであることは珍しくなく、林田社長は金と権力を持っているので、藤原光司と知り合いでも不思議ではなかった。

それにこれだけ待っていて、藤原光司だけが来て尋ねたのだから、彼女は頷いて「たぶん私です」と答えた。

林田社長...