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第60章

笠木絵里奈のいわゆる折れたのは、ただ自分に下りる階段を用意しただけのことだった。

「それならもういいわ。笠木家の悪口を言われたことも気にしないことにするわ」と言い終えると、彼女は岩崎奈緒に鋭い視線を向けた。

その言葉が終わるや否や、岩崎奈緒は笑い出した。

笠木絵里奈は一瞬にして恥ずかしさと怒りが込み上げ、脇に垂らした指先まで強張らせた。この女、何を笑っているの?

岩崎奈緒は立ち上がり彼女を見据えた。「笠木さん、そういう言い方はないでしょう。これだけ多くの人の前で先に私を中傷しておきながら、真相が明らかになった今、私に謝るどころか、まるであなたが寛大で私と争わないと言わんばかり。笠木家...