




第6章
岩崎直樹は鈴木蘭の元夫の息子で、岩崎雄大が鈴木蘭と岩崎陽菜に対して負い目を感じていたため、岩崎直樹を引き取って一緒に暮らすことにしたのだった。
岩崎奈緒が岩崎家を出たのも、一部は岩崎直樹が理由だった。
彼は子供たちの中で一番年上で、岩崎家に来たばかりの頃はかなり自由奔放だった。岩崎奈緒はお風呂から上がったばかりの時に彼とよく鉢合わせてしまい、同じ屋根の下で顔を合わせるたびに非常に気まずい思いをした。
岩崎奈緒は最初、岩崎直樹に別に住むよう提案したが、岩崎雄大はとても難色を示した。岩崎奈緒は彼を困らせたくなかったので、自分から岩崎家を出ることにしたのだ。
今となっては、家の中で部外者だったのは彼女自身だったのかもしれない。
岩崎直樹は現在、岩崎グループで働いており、スーツ姿で笑顔を浮かべ、見た目も整っているが、その目つきは岩崎奈緒にとって非常に不快なものだった。
「奈緒、陽菜に会いに来たの?」岩崎直樹が挨拶をしながら、岩崎奈緒の手にある薬を見て、目に異様な色が浮かんだ。「具合が悪いの?」
「うん、最近ちょっと頭痛がして、医者に薬を処方してもらったの」岩崎奈緒は薬をポケットにしまった。「もう陽菜には会ったから、用事があるから先に行くわ」
岩崎奈緒は冷淡な表情で、病院を後にした。ロビーで、岩崎直樹は岩崎奈緒の背中を見つめながら、眉を上げた。
目ざとく見抜いたところ、あの薬は女性の局部の損傷を治療するものだった。表面上は冷淡な女性が、裏では派手に遊んでいるとは思わなかった。
まあ、3年も空っぽのベッドで過ごしていれば、どんな女性も耐えられないだろう。
岩崎直樹の頭の中に、岩崎奈緒が媚びた目でベッドに横たわる姿が浮かび、下半身に熱いものを感じた。
急ぐことはない。彼女が岩崎家に戻れば、チャンスはいくらでもある。
岩崎奈緒の姿が病院から消えるのを見ながら、岩崎直樹はゆっくりと微笑みを浮かべた。
車に乗り込んだ岩崎奈緒は、まだ非常に不快な気分だった。疲れているせいだろうと思い、少し休んでから家に帰って休むことにした。
そのまま午後6時まで眠り続け、岩崎奈緒は電話の音で目を覚ました。
「岩崎奈緒、今夜7時に林田社長との面会だ。忘れるなよ」
河野浩二の一言で、もう少し眠りたかった岩崎奈緒は瞬時に目が覚めた。暗くなりかけた空を見て、岩崎奈緒は急いで身支度を始めた。
午後ずっと眠っていたおかげで、岩崎奈緒の体調はだいぶ良くなっていた。幸い、以前のデザイン案は手元にあったので、あまり準備は必要なかった。
月想居の入り口に着くと、岩崎奈緒が河野浩二に迎えに来てもらおうと電話をかけようとした矢先、河野浩二から先に電話がかかってきた。
「林田社長が友人がもうすぐ到着すると言っていて、一緒にビジネスの話をするそうだ。彼が君を案内するから、少し待っていてくれ」
月想居は会員制で、会員でなければ入れないため、岩崎奈緒はその場で待つしかなかった。
一台のロールスロイスが月想居の前に静かに停車した。車内では、藤原光司が電話を受けていた。
「いとこ、これから入るとき入口で一人迎えてくれないか。今回俺が贈る贈り物は絶対に気に入るはずだ!」
藤原光司は眉をひそめた。「どんな贈り物だ?」
「ある...」
電話の向こうの音楽が突然大きくなり、藤原光司は彼が何を言っているのか聞き取れなかった。かすかに「女...」という言葉が聞こえた気がした。
藤原光司は不機嫌そうに電話を切った。
林田景はK市で最も有名な道楽者で、花と酒に溺れる放蕩者だった。彼が言う贈り物とは、また女性のことだろう。そう考えると余計な想像をせずにはいられなかった。
彼が帰国したばかりでこんなことをするなんて、藤原光司はそろそろこのいとこをきちんと教育する必要があると感じた。
車から降りると、藤原光司はすぐに入口に立っている女性に気づき、少し驚いた。
近づいて、その見覚えのある顔を見ると、思わず眉をひそめた。
彼女か?
岩崎奈緒はしばらく待った後、待っている人が誰なのか尋ねようとした矢先、「見覚えのある」人影が自分に向かって歩いてくるのを見た。
「見覚えがある」どころではない。二人は今朝まで同じベッドにいたのだから。