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第50章

彼女は本当に彼のことが好きだった。

藤原光司はしばらく、どう反応すればいいのか分からなかった。

以前にも好意を示された経験はあったが、その度にためらうことなく断ってきた。しかし目の前の女性は違う。

彼らは体を重ねたことがある。

岩崎奈緒が初めてではなかったとはいえ、一度でも水と乳のように交わる親密な関係になれば、相手を普通の人として扱うことは難しくなる。

自分と関係を持った女性が、今は恋慕する立場にいる。

以前のように他の女性を扱うようなやり方では、あまりにも情がないように思えた。

だから数秒ためらった後、淡々と口を開いた。「俺が結婚していることは知っているよね?」

岩崎奈緒...