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第38章

道村礼子は一瞬心もとなくなった。話の糸口を切り出したのは彼女だったが、この賭けに乗るつもりはなかった。

そのため、道村礼子はスタジオ内の他のスタッフたちに視線を向けたが、彼女の目と合った者たちは皆、さっと目を逸らし、この件に関わろうとする者は誰一人いなかった。

道村礼子は進退窮まり、ただただ怒りを募らせるばかりだった。

普段から岩崎奈緒に不満を持っていたはずの連中が、いざという時になぜ誰も立ち向かおうとしないのか。

道村礼子は自分に対する怒りも認めたくなかった。岩崎奈緒に勝てないと分かっていながら、なぜ愚かにも目立つ真似をしたのか。

脇に垂らした手がゆっくりと握りしめられ、爪が掌に...