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第29章

謝るのが早すぎて、一瞬何も言い返せなくなった。

この女との会話は、なぜこうも息苦しく感じるのだろう。

「藤原社長、では現場を確認してきます。後ほど設計図についてご相談させていただき、ご満足いただけましたら、リフォームチームに着工を依頼します」

藤原光司は淡々と返事をし、彼女を見ることはなかった。

岩崎奈緒がオフィスを出ると、正面からコーヒーを持った女性が歩いてきた。

わざと横に一歩避けたが、派手に着飾り、念入りに化粧をした女性は、彼女の横を通りすぎる時、故意に足をくじいたふりをした。

その直前に入れたばかりのコーヒーが、一気に岩崎奈緒の胸元にかかった。

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