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第22章

「主人は、ごく普通のプログラマーです」

さらっと嘘をつきながら、真顔で続けた。「結婚生活は二人で維持するものです。彼一人に苦労させるわけにはいきませんから」

彼女は藤原光司にコーヒーを差し出し、上品に微笑んだ。「あまり稼ぎは多くありませんが、とても家庭的な人なんです」

岩崎奈緒が語ったのは、自分が思い描く理想の伴侶像だった。

明らかに、藤原光司はあらゆる面でその理想像とはかけ離れていた。

「では藤原社長は?先ほどあの方が結婚されていると仰っていましたが、奥様はどのような方なのでしょうか?」

岩崎奈緒はただ会話を続けるための話題を探しただけだった。クライアン...