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第19章

部屋の中は静かになり、壁の時計のカチカチという音までもはっきりと聞こえた。

藤原光司は二度目に自分が幻聴を聞いたのではないかと思った。

だから彼女が自分を「主人」と呼んだのは、人違いだったのか?

クリスタルのシャンデリアが彼女の横顔を光で包み込んでいる中、彼女が続けて言った。「あの夜のこと、もう覚えていません。藤原社長もお忘れのことでしょう。さっきは主人と間違えてしまって、申し訳ありませんでした」

皆大人なのだし、あの夜は鈴木蘭の仕業だったのだから、彼のせいではないし、責任を負う必要もない。

今は仕事が一番大事であり、一枚の膜の問題にこだわる必要はない。

「藤原社長が私のデザイン...