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第12章

「もしもし……」

玖珂智のことを知っている限り、彼は毒舌で私とよく言い争うけど、その低くて磁性のある声には悪口を言えない。

「あの……帰るから、別れを告げておこうと思って」

昨夜の惨めな姿を見られたことを思い出し、多少なりとも気まずさを感じた。

「ふん!どうした?メイドの世話が行き届いてなかった?」

玖珂智は軽く鼻で笑い、皮肉っぽく言った。

「そんなことないよ!」すぐに反論した私。「執事もメイドもすごく親切だったし、それに、用意してくれた服とお金もありがとう!」

「へぇ……小林夕子、お前はますます後退してるな?こんな小銭で感謝感激か。それとも逃げ出して借金を返さないつもりか?」...