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第10章

湯川優手に持った【少女の恋】を、香り紙に軽くスプレーし、鼻先で丁寧に嗅いでみる。

「トップノートの花の香りの再現度は良いわね。クチナシの香りが非常に抑えられていて、他の香料を邪魔していない。EXの調香師は名実ともに一流ね」

彼女はそう言いながら、松本佳木が既に香りを立たせておいた香り紙を嗅いだ。

「ミドルノートの香りが弱すぎる。ほとんど良い表現がないわ」

「ラストノートの持続時間も短い。確かに陳皮の香りは感じるけど、使われている陳皮の品質がとても悪いのが分かる。恐らく3年も経っていないものね」

湯川優は鑑定を終えると、香り紙を置き、香水のボトルを手に取って注意深く観察し始めた。

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