




第6章
またしても苦悶に満ちた夜が明けた。
水原拓真は復讐とばかりに黒川綾を激しく求め、あらゆる手段を尽くして彼女から艶めかしい声を引き出そうとした。
一度の行為は一時間以上に及び、一晩の間に何度も繰り返された。
黒川綾はこれが長く苦痛に満ちた夜になると覚悟していたが、やがて強烈な疲労感が全身を襲い、すべてが麻痺していった。
「まだ起きないのか?もう一回やるか?」
水原拓真は自分が一晩中もてあそんだ戦利品を嘲るように見下ろし、さっと手を伸ばしてカーテンを開けた。
朝の日差しが容赦なく部屋の隅々まで照らし出し、同時に彼女の首筋に点々と残る赤い痕も浮き彫りにした。
これらの痕は水原拓真が昨夜彼女を苦しめた証拠であり、逃れることのできない屈辱だった。
彼女は苦労して体を起こし、鏡の前に立った。
その赤い痣を軽く撫でながら、目には苦痛と屈辱の色が満ちていた。
「ふん、昨夜あんなに私を責めたのは、今日会社で恥をかかせたいだけでしょう?」
彼女にはわかっていた。これらの痕は隠しようがない。何とかして隠す方法を見つけなければならない。
そして、彼女の視線はクローゼットの中のスカーフに落ちた。
それは母親から譲り受けた、かつて最も気に入っていたものだった。
彼女は黙ってそのスカーフを取り出し、首に軽く巻きつけ、必死にそれらの痕を隠した。
服を着終えると、黒川綾は深く息を吸い込み、新しい仕事——水原拓真の秘書——を始める準備をした。
「黒川綾、あなたは乗り越えられる」
彼女は知っていた。この仕事が彼女の苦痛の始まりになることを。しかし選択肢はなかった。
家族のため、罪のない親族のために、彼女はこのすべてに耐えなければならなかった。
彼女が豪邸を出ると、日差しが彼女の顔に当たり、一瞬めまいを感じた。
彼女の足取りは重く、一歩一歩が綿の上を歩くようで、体も心も極限まで疲れ果てていた。
だが立ち止まるわけにはいかない。前に進み続けなければならない。
黒川綾は水原拓真の会社に到着し、雲をつくほど高いビルに足を踏み入れた。
「水原奥様、これは?」
門番は一目で彼女を認め、思わず前に出て熱心に尋ねた。
黒川綾はIDカードを提示した。
「出勤です」
門番の驚いた視線を受けながら、彼女の足音は磨き上げられた大理石の床に澄んだ響きを立てた。
彼女の鼓動もそれに合わせて速くなった。
ここが彼女の新しい戦場になることを、彼女は知っていた。ここで生き抜かなければならない。
彼女が水原拓真のオフィスに入ると、すでに数人の秘書が忙しく働いており、外からも様々な奇妙な視線が彼女を追い続けていた。
「水原奥様が出勤?離婚したんじゃなかったの?」
「黒川家はもう破産したのに、どうしてまだ水原奥様でいられるの?元夫に取り入ろうとしてるんじゃない?」
彼女たちは黒川綾の首のスカーフを見て、疑惑と好奇心の目を向けた。
「もしかして家庭の事情で、わざと水原社長を誘惑してるの?元妻が不倫相手に?」
「水原社長はあんなに上品な方なのに、そんな人のはずないわ。何か言えない取引があるんじゃない?」
黒川綾はこれらの憶測に無関心を装った。ここでは弱さや恐怖を見せるわけにはいかないことを知っていた。
「そのスカーフ……ひどく醜いな。スカーフを取って、昨夜の『戦果』を皆に見せたらどうだ?」
水原拓真は自分のデスクの後ろに座り、顔に冷笑を浮かべていた。
彼は黒川綾を見つめ、目には挑発と嘲りが満ちていた。
黒川綾は何も聞こえなかったかのように装い、冷たい声で尋ねた。
「水原社長、今何をすればよろしいでしょうか?」
水原拓真の声は低く力強かった。
「処理してほしい仕事がある」
彼は黒川綾に分厚い書類の束を渡した。それは山のように高く積み上げられ、重さに彼女はほとんど受け取れないほどだった。
彼女はこの仕事量が秘書の通常業務をはるかに超えていることを理解していた。
「これらの書類をすべて整理し、会社の近況に早く慣れろ。この仕事は今日中に終わらせろ」
水原拓真の声には命令の口調が含まれていた。
黒川綾はうなずいた。彼女は何も言わなかった。
どんな抵抗も無駄だということを知っていたからだ。
彼女は黙って書類を受け取り、仕事を始めた。
「水原社長は遊び方を知ってるわね。人気の新星と婚約しながら、元妻を側に置いて秘書にするなんて」
「黒川家のお嬢様はそれなりに美しいけど、まさか突然家が落ちぶれるなんて、残念ね」
「何が残念なの?あの隠そうとしてかえって目立つ様子を見れば、この仕事が『サービス』と引き換えに得たものだってわかるわ」
オフィスの他のスタッフは小声で噂し始め、彼女たちの視線は時折黒川綾の首に落ちた。
彼女たちの目には好奇心と軽蔑が満ち、彼女たちは密かに黒川綾を排除し、いじめ始めた。
黒川綾は冷静さを保とうとした。ここで自制心を失うわけにはいかないことを知っていた。
彼女は残業を始め、狂ったように目の前の資料を整理し、データを記録した。
彼女の指はキーボードの上を素早く動き、目はコンピューターの画面をじっと見つめていた。
体は極限まで疲れ果てていたが、止まるわけにはいかなかった。この仕事を完成させなければならない。
夜が訪れ、オフィスの他のスタッフはみな帰ってしまい、黒川綾だけが残っていた。
「やっと読み終わった」
彼女はほっとして伸びをし、すべての仕事を終えると立ち上がり、帰る準備をした。
「私のバッグは?」
彼女は突然、自分のバッグを水原拓真のデスクに忘れたことを思い出した。
「この時間なら、彼はもう帰っているはず」
黒川綾は慎重に水原拓真のオフィスのドアに近づいた。
そのとき、彼女は奇妙な音を聞いた。
「拓真、ダメ……誰かが来たらどうするの?」
加藤枝子は照れ隠しに「ダメ」と言いながらも、その体は小蛇のように水原拓真に絡みついていた。
水原拓真の目は誘惑に満ちていた。
「枝子、俺とセックスするのが欲しくないか?」
加藤枝子は顔を赤らめ、水原拓真の耳に熱い息を吹きかけ続けた。
「拓真、欲しい!」
水原拓真のオフィスのドアは半開きになっており、黒川綾は目を上げるとすぐに絡み合う二つの体を見た。
「あぁ……拓真、私を!」
水原拓真と加藤枝子はオフィスで親密な行為をし、加藤枝子の放埓な叫び声が空っぽのオフィスに響き渡った。
黒川綾はめまいを感じた。
彼女の心は苦痛と屈辱で満ちていた。
二人の間にはすでに関係があったことは予想していたものの、このような光景が目の前で繰り広げられると、彼女はそれを受け入れることができなかった。
水原拓真はドアにいる黒川綾に気づいた。
というより、彼は意図的に黒川綾に見せたのだった。
彼の顔には得意げな笑みが浮かんでいた。
「枝子、お前は美しい!あの女とは比べものにならない」
彼はわざと動きを大きくし、目には挑発と嘲りが満ちていた。
黒川綾は吐き気を感じた。彼女はこのような侮辱に耐えられず、素早く立ち去った。
彼女は会社から飛び出し、大通りに出た。
夜風が彼女の顔に当たり、涙は風に乾かされ、跡だけが残った。
彼女は寒さを感じ、心も冷え込んだ。
「これが私のこれからの生活なの?」
彼女はかつてない絶望と無力感を感じた……