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第37章 彼女は呼吸さえも間違っている

「さあ、そろそろ入りましょう」

水原雪乃が声をかけた。

水原拓真はようやく我に返ったが、その目にはまだ不自然な色が残っていた。

彼は少し躊躇った後、腕を差し出した。

黒川綾は一瞬固まった。

「何をぼんやりしている?」水原拓真が冷たい声で言った。

黒川綾は唇を噛み、少し恐る恐るといった様子で水原拓真の腕に手を添え、彼の歩調に合わせて宴会場へと向かった。

それを見た加藤枝子の目には怒りの炎が燃え上がり、すぐに後を追おうとしたが、水原雪乃に遮られた。

「加藤さん、あなたが今入るのは適切ではないわ。もう少し後にしたらどう?それに、拓真には近づかないで」水原雪乃は見下すような目で加藤枝...