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第46章

エレベーターに二人の影が映し出された。

坂井晴美はこの男を見つめながら、彼が先ほど中村雅子に言った言葉を思い出していた。

——坂井晴美がしてくれたことには感動しているけど、感動は所詮恋愛じゃない!

——お母さん、もう僕を苦しめないでください。僕は本当に坂井晴美のことを愛していないし、この結婚を続けることもできません!

彼は何度も何度も、彼女にも周りの人にも、彼女を愛していないと言い聞かせてきた。

それでも彼女は壁にぶつかり続け、振り返ることもなかった。

坂井晴美は疲れたように俯いた。

突然、耳元で彼の声が聞こえた。

「坂井晴美、この三年間、ごめん」

坂井...