冷酷な社長からの逃避

第34章

「あなたと坂井晴美が結婚した時、私は祝いの酒も飲めなかったよ！そういえば、坂井晴美は本当に不幸だな。あなたに嫁いだのに認めてもらえないだけじゃなく、結婚式すらなかったんだから！」

藤原恭介の心はすでにぐちゃぐちゃだった。高橋陽平が老僧のように横でぺちゃくちゃと話し続け、聞いていると余計に煩わしく感じた。

藤原恭介は脇に置いてあったスーツのジャケットを手に取り、立ち上がって外へ向かった。

高橋陽平が我に返り、慌てて声をかけた。

「恭介、どこ行くんだ？」

藤原恭介は彼の質問に答えなかった。

藤原恭介がバーを出ると、内藤健太がネット上の坂井晴美に関するニュースの対応をして...