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第50章

藤原卓也は何も説明せず、佐倉桜に一瞥もくれないまま、そのまま階段を下りていった。

佐倉桜は拳を握りしめ、まるで底なしの深淵に落ちていくような感覚に襲われ、顔には暗い影が落ちていた。

彼女はゆっくりと佐倉寧々の方を見た。

佐倉寧々はソファに腰掛け、だらしなく欠伸をしながらも、その一挙手一投足には気品が漂っていた。

まるで骨の髄まで染み込んだ生まれながらの気高さで、たとえ田舎で十年も育てられたとしても、戻ってきた彼女は人々を驚かせるだけの存在感を放っていた。

「お姉さま、卓也と仲直りしたの?」

佐倉寧々は彼女に一瞥をくれた。

「藤原卓也に聞いてみたら?」

佐倉寧々が階下へ向かうと...