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第52章

彼は美咲の顎を掴み、左右に揺らしながら、濡れた瞳を見つめた。

「美咲、惹かれている」

疑問ではなく、断言だった。

薬物実験体が惹かれると、香りを放つ。間違いなくそういうことだ。

その言葉を聞いて、彼女自身も一瞬戸惑った。

美咲は薬物実験体だ。十七歳になるまで、闇の中で足掻くか、自分の地位を築くかのどちらかだった。彼女は美しいと褒められたことも、強いと言われたこともあった。

だが、惹かれていると言われたことは一度もなかった。

だから先ほどの体の熱さ、下腹部に漂う恥ずかしさの感覚は、彼女が惹かれたということなのか?

これが物語に書かれている「惹かれる」という感情なのか。互いだけの...