第1章
東の国境。
オークション会場。
夜は深く、地下は蒸し暑く、人々が群がっていた。
会場中央の円形台がゆっくりと上昇し、商品は深紅のビロードで覆われ、神秘的な雰囲気に包まれていた。
「今回の競売品は、主催者が大金をはたいて手に入れた逸品だそうだ」
「へぇ！どの大物の手に渡るのかな」
「そんなに興奮して話すなよ。どれほど魅力的なのか、この目で確かめてやる」
逸品！
会場二階の特別室で、長く骨ばった指が机を叩き続けている。琥珀色の瞳には遊び心が宿っていた。
黒いテールコートに銀色の狐面を付けた男が登場し、半分後ろで束ねた長髪を揺らしながら、マイクを手に取った。静かながらも鋭さを秘めた声で語り出す。
「インターコンチネンタル・オークションハウスへようこそ」
その言葉と共に、喧しかった観客席が一瞬にして静まり返った。
東の国境のインターコンチネンタルクラブは、謎めいた組織の後ろ盾があり、ここで騒ぎを起こす者はいない。
騒げば、死あるのみ。
「商品の説明は簡潔に。神山の薬物実験体、開始価格200億」
白い手袋をはめた長い指が赤いビロードを取り除くと、巨大な金色の檻の中に少女が横たわっていた。光の流れる仙女の羽衣に包まれている。
黒髪に白い肌、秋の水面のような瞳。世事を知らぬ純真さを湛え、薄絹で顔を半分隠した姿は、人々の想像を掻き立てた。
その薄絹の下に隠された顔は、どれほどの絶世の美貌なのだろうか。
「なんと！これが噂の神山の薬物実験体か？この体つきだけでも200億の価値があるな」
「薬物実験体の血を飲めば万病が治り、寿命まで延びるという。さすが200億の逸品だ」
「チッ、血なまぐさいな。もう一つ噂があってな、薬物実験体と夜を共にすれば、血を飲むのと同じ効果があるらしい」
「あんな天女のような子が身悶えする姿を想像すると、長寿まで手に入れられるなら、どんな値段でも安いものだ」
「本当なのか？神山は確かに国際的な医療研究の最高峰だが、謎に包まれている。場所すら分からないのに、本当に神山の薬物実験体なんているのか？」
「君、そこが分かってないな。これはインターコンチネンタルクラブだ。偽物なんてあり得ない」
「202億」
司会者の声が落ちると、すぐに札が上がった。
「206億」
「210億」
「220億」
「260億」
「……」
観客席の熱気は増す一方で、値段は急上昇を続けた。
精巧な鳥かごの中の少女は終始うつむいたまま、澄んだ水のような瞳は平静で、世間知らずの様子。まもなく買われて弄ばれる恐れも見せない。
2階の特別室にて。
「主様、名医は見つかりませんでしたが、この神山の薬物実験体はいかがでしょうか？」
夜十神望は黙したまま、金色の檻の中の女性、いや少女と言った方が適切かもしれない存在を見つめていた。
主人が言葉を発しないため、夜十神謙介はただ待つしかなかった。
価格はすでに1000億に達していた。
ビール腹の、濁った目をした禿げ頭の男が罵りながら、「くそっ、こんな高値か。この妖精を手に入れたら、三日間ベッドから起き上がれないようにしてやる」
「1100億」
隔室の老人が手を振り、カモの気配を漂わせた。
夜十神望は眉をひそめ、軽く手を振ると、側近がすぐに札を上げた。「2000億」
価格帯が一気に数倍になり、会場は静まり返った。
夜十神謙介は誇らしい気持ちになった。主人は普段オークションには参加しないが、参加するときは必ず最後の勝者となる。
2000億という価格に、参加者たちは躊躇い始めた。
上場企業でさえ、これほどの収入を上げられないのだ。
VIP席の中央位置を占める人物は、一体何者なのか？2000億という金額を、まるで1万円のように軽々しく口にする。
「あいつ、カモじゃないのか？」と疑う声が上がる。
「田舎者め、金に困らない超富豪にとって、薬物実験体は2000億以上の価値があるんだ。彼らに足りないのは金じゃない。金を使って楽しむための命さ」