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第2章 再び龍将なし

笠原千佳の頭は今、少し混乱していた。

彼女は今の自分の姿を憎んでいた。この十年間、数え切れないほどの嘲笑、冷たい視線。

自分の実の両親さえも自分を嫌っていた。

毎日涙で顔を洗うように過ごしてきた。

今では結婚さえも、ただ適当な人に自分を嫁がせるだけのこと。

自分を娶りたいと思う人が何を求めているのか、笠原千佳にはわかっていた。きっと権力も地位もない普通の人だ。

全身火傷で醜くなった自分を娶るのは、笠原家に縋りつきたいだけだろう。

でも、なぜこうなったのだろう?

この男性は端正でハンサム、そして自分を宮殿よりも豪華な屋敷に連れてきた。

帝王居。山全体を占める広大な敷地。すべてが帝王居の領域だった。

高級で一等地の娯楽施設がすべて揃っている。

こんな豪華な屋敷を、川中で誰が所有する資格があるというのだろう。笠原千佳には思いつかなかった。

それなのに、突然現れたこの男性が自分の夫となり、こんなにも自然に自分をここへ連れてきた。

夢よりも夢のような話ではないか。

西原隼也は笠原千佳が緊張している様子を見て、そっと手を引き、柔らかで豪華なソファに座らせた。

「黒田、物を持ってきなさい」

西原隼也は穏やかに言った。声色は優しく、目の前の優しい女性を怖がらせないように気を配っていた。

大きな扉が開き、黒い服を着た黒田が、古代の医師が使うような薬箱のような箱を持って入ってきた。

西原隼也が軽く手を振ると、部屋にいた全員がすぐに退出し、慎重にドアを閉めた。

西原隼也は優しく笠原千佳の顔からベールを取り去った。

「あ……あなた……」

笠原千佳は驚いて、慌てて両手で顔を覆った。

この人は自分がぼんやりしている間に、ベールを取ってしまったのだ。

しかし、全身火傷で醜くなった笠原千佳の両手で隠せる部分など、どれほどあるだろうか。

あの目を覆いたくなるような傷跡、恐ろしい瘢痕を見て、西原隼也の心は激しく痛んだ。

百万の軍を率いる龍将、鉄のような心を持つ男が、今この瞬間、目に涙を浮かべずにはいられなかった。

笠原千佳は絶望した。結局、自分を嘲笑いに来ただけなのか。

ふん。

確かに、自分は何を期待していたのだろう。

この何年もの嘲笑や軽蔑はもう当たり前のことではないか。

笠原千佳は手を下ろし、さらに服さえも脱ぎ捨てた。

嘲笑えばいい。もう何も気にしない。

先ほど帝王居に入った時の好奇心は消え、残ったのは絶望と苦痛だけ。さあ、嘲笑を始めてくれ。

しかし、いつまで待っても何も起こらない。笠原千佳が思わず顔を上げると、その水のように澄んだ瞳が西原隼也の悲しみに満ちた目と出会った。ちょうどその時、一筋の涙が西原隼也の目から流れ落ちた。

嘲笑や皮肉を覚悟していた笠原千佳は、この光景に動揺した。

「あ、あなた、大丈夫?」

「君は時々優しすぎるんだ。今でも僕のことを心配してくれる。あの時、火事現場に飛び込んで人を助けるべきじゃなかったのに」

これを聞いて、笠原千佳はためらうことなく顔を上げた。

「もう一度同じことがあっても、結果がわかっていても、私はまた人を救うわ」

言い終わるや否や、笠原千佳は温かく力強い腕に抱きしめられ、西原隼也のすすり泣く声が聞こえた。

「辛かったね。これからは僕が君を守る。二度とつらい思いはさせない。安心して。君の傷は治せる。元通りになれるよ。前よりもっと美しくなれるから」

笠原千佳の体が震えた。しかし、わずかに灯った希望の火はすぐに彼女自身の手で消された。

「無理よ。最先端の美容整形や植皮手術でも駄目なの。私の体には一つも無傷の肌がないから。でも、ありがとう」

「信じて!十日、たった十日でできるから!」

「わかった、信じるわ」

笠原千佳は西原隼也の真摯さを感じ、彼を失望させたくなかった。どうせ期待はしていない。試させてあげよう。

この何年もの間で、初めて本当に自分に優しくしてくれた人だ。笠原千佳はすでに、西原隼也が失敗した時には自分が彼を慰めなければならないのではないかと考えていた。

笠原千佳は素直に協力し、西原隼也は優しく彼女の傷に軟膏を塗り、ミイラのように包帯で全身を覆った。

笠原千佳は西原隼也の邪魔をせず、その澄んだ瞳で彼をじっと見つめ、見入っていた。

十年間の絶望と嘲笑を経験しても、その瞳は依然として澄み切っていて、まるで語りかけているようだった。

すべてを終えると、西原隼也は笑顔で笠原千佳の隣に座り、あれこれと話を始めた。

ほとんどは笠原千佳が聞き役で、目を細めて微笑むようだった。

十年間、こんなに楽しいと感じたことはなかった。

十年ぶりに、自分を気にかけ、大切にしてくれる人ができた。

笠原千佳には理解できなかった。西原隼也がこれほど優れていて、若くてハンサムなのに、なぜ川中で一番醜いとされる自分を選んだのか。

西原隼也の様子を見る限り、笠原家の力に頼る必要もなさそうだ。

しかし笠原千佳は尋ねなかった。西原隼也の誠実さを感じることができたからだ。人の感情は嘘をつけないものだ。

この十日間、笠原千佳は人生で最も幸せな時間だと感じた。

容姿が元に戻るかどうかも、それほど重要ではなくなっていた。

毎日、西原隼也は自分と話し、物語を語り、自分をあやしてくれた。

話し方さえも意識的に優しく柔らかく、まるで自分を怖がらせないようにしているようだった。その不器用で照れくさそうな様子がとても愛らしく、笠原千佳は目を細めて微笑むことが多かった。

十日が過ぎ、西原隼也は部下たち全員を南部へ戻らせた。

国境には彼らが必要だった!

彼はもう龍将ではなく、龍将の特権も使わないつもりだった。

しかし部下たちは去りたがらず、特に黒田は頑固に西原隼也の側に残ろうとして、激しく叱られて追い返された。

なんだと?

西原隼也が龍将でなくなったからといって、命令に従わないつもりか?

十日はあっという間に過ぎ、笠原千佳は時間がもっとゆっくり流れることを願った。

包帯を取る時が来て、笠原千佳は非常に不安だった。目を閉じたまま開けることができず、体は震え、激しい心拍が西原隼也にもはっきりと聞こえるほどだった。

しかし西原隼也は動作を緩めることなく、素早く包帯を取り去り、笠原千佳を全身鏡の前に抱いて連れて行き、笑いながら言った。

「怖がらなくていいよ。目を開けてごらん。僕の腕の中に女神がいるから」

笠原千佳は何度も葛藤し、何度も心の準備をしてから、ゆっくりと目を開けた。

鏡に映る自分を見て、思わず叫んだ。

「こ、この女神は誰?」

「ははは、この女神は僕の妻だよ!」

今の笠原千佳の肌は完全に回復し、雪のように白く、赤ちゃんのようにピンク色で柔らかく、潤いに満ちて輝いていた。その澄んだ瞳と絶世の美貌は、まさに女神以上の存在だった。

我に返った笠原千佳は、自分が裸のまま西原隼也に抱かれていることに気づき、とても恥ずかしくなった。

「あ、あなた、降ろして、私……」

「君は僕の妻だよ。何が問題あるの?」

西原隼也が彼女を降ろすはずもなく、笠原千佳を抱えたまま浴室へと歩いていった。

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