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第54章

「もちろん」

「年末って金融業界の人が一番忙しい時期じゃないの?」

「そうでもあり、そうでもなし」宮下雅文は口元を緩め、意味ありげに言った。

「要は人次第さ。大切な人なら、どんなに忙しくても時間を作るし、重要じゃない人なら、暇でも相手にする気にならない」

宮下雅文の言葉に含みがあって、鈴木千穂がまだ考えを巡らせているうちに、ライトがちらりと点滅し、パートナー交換の合図が出た。

幻想的な照明の中、一人の人影が投げ出されるように近づいてきた。

二人が入れ替わる瞬間、鈴木千穂は宮下遥の顔に浮かんだ驚きと信じられないという表情をはっきりと見た。

次の瞬間、彼女の手首はし...